不貞行為をして訴えられました。相手のほうから積極的に誘ってきたというのは有効な反論になりますか?

不倫事例解説

川西能勢法律事務所HP
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1 相手のほうから積極的に誘ってきた場合でも責任はある

 無理矢理されたという場合は別ですが,相手のほうから積極的に誘ってきたという事情があったとしても,不貞行為の責任そのものが否定されるわけではありません。

 相手のほうから積極的に誘ってきた場合に,そのような事情が慰謝料の減額や増額の理由になるかどうかは争いがあります。

2 裁判例

 いずれが積極的であったか否かという点について,慰謝料の減額,増額の理由にならないと判断した裁判例は多くあります。一方で,慰謝料の減額,増額の理由になると判断した裁判例も多くあります。すなわち,いずれが積極的であったのかという点が慰謝料の減額,増額の理由になるか否かの争点については,裁判所の判断は割れているということです。

 ようするに,事案によりケースバイケースということになりますが,どのような場合に慰謝料の減額,増額の理由として考慮され,または考慮されないかについて,明確な基準があるわけではありません。

 たまたま担当することになった裁判官がどちらの考え方をとるのかによって左右されてしまいます。

3 実際の対応について

 いずれが積極的であったのかという点が慰謝料の減額,増額の理由になるか否かについて判断が割れている以上,当事者は,自分に有利な主張をとりあえずはしておくことが賢明です。例えば,不貞行為をされた側であれば,被告が積極的に誘ったという事情があるため慰謝料は増額されるべきであると主張することになり,不貞行為をした側であれば,相手に積極的に誘われて不貞行為を及んだにすぎず,慰謝料は減額されるべきであると主張することになるでしょう。

 もっとも,当事者同士の話し合いの場においては,積極的に誘われたので不貞行為に及んだにすぎないといった発言をすると,相手の感情を逆なでする可能性が高く,逆に話が拗れる可能性もあります。そのため,現場の様子をみながら対応したほうがよさそうですね。

4 立証責任を負うのはどちら

 「相手方から積極的に誘った私が悪いというように言われています。けれども,LINEの履歴などはすべて消去しており,私から積極的に誘ったわけではないという証拠が残っていないんです。」というような相談を受けることがあります。

 被告が積極的に誘ったから慰謝料は増額されるべきであるとの主張がされる場合,被告が積極的に誘ったことについては,慰謝料を請求する側,つまり原告側が立証しなければなりません。反対に,相手から積極的に誘ってきたので,慰謝料は減額されるべきであるとの主張をする場合は,相手から積極的に誘ったことを,慰謝料を請求される側,つまり被告が立証しなければなりません。

 相手方から積極性を理由に減額,増額の主張がされたとしても,それを否定するために証拠を提出して立証する必要はなく,減額や増額を主張する側が証拠を提出し積極性を立証することができなければ,訴訟では積極性の認定はされません。

 なので,上記の相談に対しては,「積極的に誘ったというのは相手方が立証する必要があり,こちら側が積極的ではないということを,証拠を出して立証しないといけないわけではありません。相手が証拠を提出できなければ,積極的に誘ったという認定はされないでしょう。」という回答になりますね。

5 まとめ

 どういう事情が慰謝料額に影響するのか,そして何を立証する必要があるのかについては専門的な知識が必要になるところですね。

 不貞慰謝料の問題について何かご不明点等ございましたら気軽にご相談ください。
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