不倫事件の交渉で気を付ける点!直接の侮辱でなくても不法行為になる場合も。

不倫事例解説

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1 愚痴りたい

 例えば、既婚者のある男性と不貞関係にあったが、奥さんにバレてしまった。奥さんは不倫相手である夫を許そうとして、不倫相手の男性は私より奥さん側に付いている。このような状況になってしまっては、不倫相手の男性、その奥さんのいずれに対しても腹が立ってしまいますよね。ここで感情的になってしまっては法的責任を問われることになるかもしれません。

2 どのような場合に違法になるの?

 ここで奥さんに対して直接奥さんを侮辱するような発言をしてしまっては、その発言内容によっては不法行為として損害賠償責任を負うことになります。つい感情的になり奥さんに対して直接侮辱するようなことを言ってしまったことが違法になり得ることは想定し易いですが、実は、直接奥さんに侮辱的な発言をしていない、例えば、不倫相手の男性に奥さんを侮辱するようなことを言っても、奥さんを侮辱したとしてそのような行為が違法になる場合があるのです。直接言ってないのでどうして違法になるのと思われるかもしれません。奥さんにその侮辱的な発言が伝わり、かつ、奥さんにその発言が伝わることを予測すべきだった場合には、過失ありとして違法となる場合があるのです。

3 裁判例の紹介(平成22年7月23日)

⑴ 事例紹介 

被告の女性は、ある既婚者の男性と不貞関係にあり、妊娠、出産もしました。その後原告である奥さんに不貞関係がバレてしまったのですが、不貞相手の男性から「嫁さんのほうが大事」と言われてしまったのです。被告の女性からすれば腹立ちますよね。被告の女性は直接原告である奥さんに暴言を吐くことはしなかったのですが、不貞相手の男性に原告である奥さんを侮辱するメールを送ったのです。

⑵ メールの内容

①「馬鹿女に手紙を書いてるんだけど,言いたい事がたくさん有り過ぎて大変よ。そうそう,子供を勝手に中絶した事を話してくれた時,自分から誘ったくせに…って言ってたよね。本当に酷い男だよ。馬鹿夫婦のせいで,私は職を失うかもしれないんだからね!話はa社に止まらず,b社の人事まで蠢いてるんだよ。まぁ,そうなった時は,馬鹿女には死ぬよりツラい目に合って貰うつもりだよ。」

 ②「私達の中では,B(不倫相手の男性)が馬鹿女を如何にして洗脳したのか,興味深々なんだよね。他所に子供が産まれた事を納得するなんて。普通,どんな理由でも許せないと思うけどね。政治家や歌舞伎役者の妻じゃ有るまいし。本気でB(不倫相手の男性)の嘘を信じてるんだとすれば,馬鹿女改め知恵遅れという結論に達したよ。」

⑶ 裁判所の判断

① 本件メールの内容は,不貞をした夫を許そうとする妻を侮辱する内容である上,原告の身辺に危害が加えられるおそれを抱かせる内容も含まれている。一度読むと脳裏に焼き付く表現が含まれており,「何度も頭の中で鳴り響き」,「いつでも冷水を浴びせられるような思い」を味わったとの原告の心情は誇張でないと認められる。いかに被告が出産直後の不安定な精神状態であったとしても,明らかに相当性を欠く表現であるといわざるを得ない。

② 被告は,B(不貞相手の男性)の職場のパソコンにメールを送信したので,原告に見せられることはないと考えていたと供述する。確かに,メールの宛先からすれば,被告が,本件メールを原告に読ませることを意図したとまで認めることはできない。しかし,本件メールを送信する時点では,B(不貞相手の男性)は,原告の方が大事であると発言したり,被告が妊娠した子が自分の子であることに疑問を呈したりしていたのであるから,B(不貞相手の男性)に宛てたメールであっても,その妻である原告に対し,原告に関する表現が含まれるメールを見せる可能性があることは当然予期すべきであり,少なくとも被告には過失があるというべきである。
 したがって,本件メールの送信は,原告に対する不法行為に該当する。

4 まとめ

 不貞された、不貞した側が事情によって感情的になり、直接嫌がらせをするなどしてそれが不法行為と判断されることは理解し易いと思います。しかし、直接言っていない場合であっても不法行為になる場合があるのです。愚痴を言いたいときは、場所と相手は選んだほうがいいでしょう。

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