独身だと思って交際したが実は既婚者だった場合慰謝料請求はできるの?

不倫事例解説

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1 交際相手の配偶者に対する責任

 既婚者と知りつつ性行為をした場合は,既婚者の配偶者に対して不貞行為による慰謝料の支払義務を負うことになります。もっとも,既婚者と知らずに性行為をしてしまった場合は,既婚者であることを知らなかったことについて故意,過失がなければ,不貞行為の責任を負いません(詳しくはこちらの記事をご覧ください)。

2 貞操権の侵害

 貞操権とは,性的な自由に不当な干渉を受けない権利,純潔を侵害されない権利です。男性から独身だと言われていたので交際をしたが実は既婚者だった。既婚者と分かっていれば交際などしなかった。このような場合は,貞操権を侵害されたことを理由として,男性に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

 貞操権の侵害を理由に慰謝料を請求ができるかどうかはケースバイケースであり,性行為をした相手が既婚者であると知らなかった場合に,必ず慰謝料を請求することができるというわけではありません。

3 どのような場合に貞操権の侵害を理由に慰謝料の請求ができるの?

 男性が意図的に既婚者であることを隠して女性にアプローチをした場合においては,貞操権の侵害を理由とする慰謝料請求が認められる可能性が高いです。

 一方で,男性が既婚者であることを隠していたとはいえないケースでは,貞操権の侵害を理由とする慰謝料請求は認められない可能性が高いです。

4 慰謝料の金額はどの程度もらえるの?

 貞操権侵害に対する慰謝料の金額はケースバイケースですが,30万円から200万円程度が相場といえます。

 男性の悪質性,交際期間,妊娠の有無,女性の認識などを総合的に考慮した上で慰謝料の金額が決められます。

 不貞行為と比較すると,100万円以下の低額になることも多いと思われます。

5 裁判例の紹介

貞操権の侵害が認められたケース

慰謝料200万円が認められたケース

 結婚相談所で出会い,初回のデートで半ば強引に肉体関係を持たされケースについて,裁判所は,「結婚も視野に入れた真摯な交際を望んでいるかのように装って原告と肉体関係を持ち,原告に対して精神的苦痛を与えた」として,慰謝料200万円を認めました。 

慰謝料100万円が認められたケース

 ホステスの従業員と客という関係で,客である男性が既婚者であることを隠して肉体関係を継続しながら交際し,ホステスの女性も男性に対して交際するなら結婚を念頭に置くことになり,不倫は受け入れられないと述べていたケースにおいて,裁判所は,100万円の慰謝料を認めました。

慰謝料30万円が認められたケース

 既婚者の参加が禁止されているパーティーで出会い,男性が既婚者であることを隠し,結婚を意識させるような発言をして交際を申し込んだケースにおいて,裁判所は,交際期間が2か月半であったこと,既婚者であることが分かったことにより交際が終了したのではないことなどの理由から,慰謝料額は30万円であると判断しました。

貞操権の侵害が認めらなかったケース

 ホステスの従業員と客という関係で親密交際に発展したケースにおいて,裁判所は,男性が女性に対して,積極的に独身であると信じさせようとし,これにより本件交際が継続していたことを認めることはできないとして,貞操権侵害に基づく慰謝料請求を認めませんでした。

6 最後に

 貞操権侵害を理由に慰謝料の請求をできるか否かは,男性が既婚者であることを積極的,意図的に隠して性行為に及んだかどうかがポイントになります。

 貞操権の侵害を理由とする慰謝料請求が認められるか否かは事例ごとにケースバイケースであり,正確な見通しを持つには,貞操権侵害を理由とする慰謝料請求の経験や知識が豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

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