不貞行為の証拠がないケースで、相手に認めさせる際の注意点について解説します。

不倫事例解説

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1 本人が不貞行為を認めていれば証拠は必要ない。

不貞の慰謝料を請求するためには証拠としてラブホテルに出入りする写真とかLINEとかが必要だと聞いたことがあるかもしれません。ただ、証拠はあくまで相手が「不貞行為はしていない」「仲良くしていたが不貞はない」など不貞行為を否定した場合、裁判所に相手の不貞行為を認めさせるのに必要になるにすぎません。つまり、相手が不貞行為を認めていた場合はラブホテルに出入りする写真などの客観的な証拠は必要ないのです。

2 客観的な証拠がない場合

 客観的な証拠がない場合であっても、相手が不貞行為を認めれば不貞行為の慰謝料を請求することができます。一方で最初は認めていたがいざ裁判となると、「不貞行為などしていない」と一転否定されることもめずらしくありません。こうならないために認めているうちに書面に「不貞行為をしました。」と書いてもらいましょう。このような合意書や念書のような書面があれば相手は後で不貞行為の事実を認めていたのを覆すのに抵抗があるでしょうし、仮に覆したとしても前に書かせた書面が決め手となり不貞行為が認められることもあります。ただ、このような書面も書き方によって証拠としての信用度が変わってきます。

3 相手に不貞行為を認めさせる書き方

⑴ 裁判例

 東京地裁令和3年3月26日判決は、妻が夫に対して不貞慰謝料を請求する事案です。夫が妻に対する傷害の事実で逮捕勾留されているときに、妻と夫は「不貞行為を認めます」との文言も含まれた合意書を作成しました。しかし、裁判では、この合意書の内容は信用できないとして、不貞行為の事実を否定し、妻の夫に対する請求を認めませんでした。

⑵ 裁判所の判断

 合意書の内容が信用できないと判断された主な理由は以下のとおりです。

ア 不貞行為の具体的な内容及び時期が記載されていない。

イ 身柄拘束下にある状態で作成された。

ウ 極めて高額の示談金が設定されている

⑶ 書面を作成するにあたり注意すべき点

ア 裁判例のケースでは単に不倫したと記載されているに留まるものでした。しかし、実際の裁判では いつ、あるいは、いつからいつまでというのを特定する必要があります。単に不倫していました、と主張するだけでは不十分です。また、具体性を欠く内容ではそれだけで合意書の信用性を弱めることにもなります。まず、前提としてできるだけ具体的に不貞行為の事実を記載しなければなりません。具体的には、いつ(いつからいつまで)、どこで、誰と、などを記載する必要があります。

イ この裁判例のように身柄拘束下という場面はそう多くはないかもしれません。しかしながら、例えばカラオケボックスのような個室で、書かせる側は友人や親族など複数人、反対に相手は一人であったというような状況で書面を書かせるといったことは珍しくありません。相手に認めさせたい、有利に話し合いを進めたいという気持ちも分かりますが、あまりに自分に有利な状況、相手に不利な状況を作ってしまうと、合意書の信用性を弱めることになります。それだけでなく、場合によっては、相手から脅迫による取り消しや錯誤無効などの主張をされる場合もあります。あくまで普通の状態で書いてもらうことを意識しましょう。

ウ どうせ書いてくれるのであればできるだけ有利な内容を書かせたいという気持ちも分かります。この裁判例では示談金の額を1000万円と記載して極めて高額と評価されています。不貞の慰謝料は100万円から200万円程度ですから、1000万円は裁判所の指摘するとおり極めて高額となります。まず、1000万円と記載しても裁判所が1000万円の慰謝料を認めるとは限りません。信義則に反するということで結局は相場程度の慰謝料が認められるに留まる場合が多いです。それだけでなく、極端に有利な内容が記載されていることから、合意書の信用性自体が疑われることもあります。相場より極端に有利な内容を記載したとしても、その内容が認められないだけでなく、そもそも合意書の信用性自体を疑われてしまっては慰謝料自体全く貰えなくなります。当事者間で協議を進める場合であっても冷静になってまともな内容の合意書を作成することが自分のためでもあります。

 4 まとめ

 書面に記載したら必ずそれがそのまま有効となるというわけではありません。裁判ではその合意書の内容が本当かどうか吟味されることになるので、勢いに任せて極端に合意書を作成してしまえば、裁判所から疑いの目で見られてしまいます。当事者間で協議する際は冷静に対応すべきであります。できれば協議をする前に一度弁護士に相談されることをお勧めします。川西能勢法律事務所の弁護士は不貞行為の慰謝料請求の事案の経験が豊富であるので、お悩みの際は一度気軽にご相談ください。

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