ラブホテルに入った証拠があっても不貞行為が認められない場合もあるのですか。ホテルに入室した証拠がありながら不貞行為を否定した最新裁判例があると聞いたのですが。

不倫事例解説

川西能勢法律事務所HP

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1 不貞行為が認められる場合

 不貞行為といえるためには、性交が認められなければなりません。親しい関係にあるとか、デートに行ったというだけでは、浮気とはいえるかもしれませんが、不貞行為とまではいえないのです。

 ラブホテルに入った証拠は、不貞行為を証明するための重要な証拠となります。なぜなら、ラブホテルは性交をするための場所なので、ラブホテルに二人でいるということは、よほどのことがなければそこで性交をしているといえるからです。

 ラブホテルに入った事実がありながら、性交が否定される事案はほとんどありませんが、最近の裁判例で、ラブホテルに入った事実を認定しながら、性交の存在を否定し、不貞行為を認めなかったものがあります。

2 令和2年12月23日判決(福岡地方裁判所)

 この裁判例は、既婚者の夫と被告女性が、複数回ラブホテルに宿泊したことを認定しながら、不貞行為の存在は証明不十分として、原告の慰謝料請求を棄却しました。

 この二人のやりとりの中で、被告女性が「やっぱり悪いことは出来ないです。不倫でしかない。」とメールを送ったことも認定されており、これらの事実から裁判所は、性行為に及んだ事実が極めて強く推認されるとしています。

 これだけで不貞行為が認められるような気がしますが、この二人は、共依存症である両者がマンツーマンで相互学習する師弟関係(既婚者夫が師匠、被告女性が弟子)にあったようです。また、他のメールでは、「セックスしたいなんて言えないそうなったら二人の関係は終わるだろうなと思っています。」「2人の関係を汚してはいけないと思いこんでいます。」といった、不貞の存在を前提にするものとは考え難いものもありました。

 このような事情を考慮して、裁判所は、不貞行為の存在は証明不十分と判断しました。

3 裁判例をどう位置付けるべきか

 この裁判例は、ラブホテルに入室した事実を認定しながら、不貞行為の存在を否定しましたが、今までの裁判所の考え方が変わったわけではないでしょう。

 二人は、お互い共依存症の師弟関係という一般的にはあまり馴染みがない関係性にあり、この点でかなり特殊な事案であったといえるでしょう。また、不貞行為の存在を前提にはできないメールが存在していたのも大きかったと思います。

 とはいえ、事案が特殊な上に、専門家でも判断が分かれるような難しい事案であったといえるでしょう。判断する裁判官が違っていたら、この裁判例の事案においても、不貞行為が認められていたかもしれません。

4 実際の交渉場面での心がけ

 今はネットで何でも簡単に調べることができる世の中ですから、ホテルに入った証拠を突き出しても、このような裁判例を持ち出して、不貞行為の存在を否定するかもしれません。

 ただ、心配することはありません。説明したとおりですが、この裁判例はかなり特殊な事例であり、ホテルに入った事実がありながら不貞行為が否定されることは極めて稀です。心配せずに堂々と請求しましょう。

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