1 不貞行為を証明するための証拠
不貞行為を証明するための証拠としては、ラブホテルや自宅に二人で出入りする写真、不貞行為をうかがわせるようなLINEのやりとりなどが代表的なものになります。ただ、必ずしもこのような都合のいい証拠があるとは限りません。ラブホテルや自宅に出入りする写真は探偵に依頼せずに取得することは難しいですし、LINEもその都度消去やディスプレイにロックをされていれば、決定的な証拠を取得することは難しくなります。とはいっても「友達から不倫していると聞いた」「二人でいるところを見た」「最近帰りが遅い」これだけでは裁判で不貞行為を証明するのは難しいでしょう。
2 決定的な証拠がなくても不貞行為が認められる場合
必ずしも決定的な証拠がなくても、間接的な証拠や事情を積み上げて不貞行為を証明することも可能です。間接的な証拠であっても、一つ一つの事情のみでは不貞行為を証明できないとしても、それらの事情を合わせると不貞行為が推認できる場合があります。有効な証拠となるかどうかは状況や内容にもよりますが、間接的な証拠や事情はできるだけ多くあったほうがいいでしょう。
3 裁判例(東京地裁令和元年6月10日)から検討
⑴ 事案
原告が妻に不倫された男性。被告は原告の男性と不倫関係にあった男性です。
⑵ 裁判所が重要した間接証拠、間接事実
令和元年6月10日東京地裁の判決では、不貞行為を直接明らかにする証拠はなかったものの、間接証拠、間接事実を積み上げて、不貞行為を優に推認できると判断されています。この裁判所が重要視した間接事実は以下のとおりです。
① 友人と飲むなどして夜遅くまで出掛けることが増えた。
② 妻は原告(夫)に対して離婚の意思を明らかにした。
③ 別居後の住居として自身の収入では賄うことができない2LDKの物件を閲覧
④ 不倫相手の男性名義で別居先の契約をして、不倫相手の男性が初期費用全額払う
⑤ 別居後わずか1週間後に不倫相手の男性と同居
⑥ 不倫相手の男性と親密にある様子が目撃されている
これらの事情をもとに、裁判所は、遅くとも妻が原告(夫)に離婚の意思を明らかにした②の時点頃までには不貞行為に及んでいたと優に推認できると判断しました。
⑶ 検討
上記①~⑥までの事実一つ一つは不貞行為を証明するまではなり得ないでしょう。しかし、これらの事情、時系列を総合的に考慮すれば、不貞行為の証明まですることができるのです。必ずしも不貞行為の直接的な証拠がなくても不貞行為を証明することができる場合もあるのです。
4 まとめ
不貞行為を証明するためには不貞行為を直接証明できる証拠が必要だと思われている方も多いと思います。もちろんそれは間違いではないのですが、直接的な証拠がなければ不貞行為を証明できないということではなく、状況によっては間接的な証拠や事情の積み上げて不貞行為を証明できることもあります。その判断はネット検索や弁護士以外の方に相談しても有用な情報を得られないと思います。もし、直接的な証拠はないが、不貞行為を証明できるのかお悩みの方がおられましたら、川西能勢法律事務所の弁護士までご相談ください。
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