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1 証言は不貞の証拠になり得るのか
前提として訴訟で不貞行為を立証するために証拠を提出する必要があるのは相手が不貞行為の事実を争っている場合ですので、もし相手が不貞行為を認めているのであればホテルの写真にかかわらず証拠は必要ではありません。相手が不貞行為を認めない場合も、裁判所に不貞行為があったと思わせればいいのですから、証拠は何もホテルの写真などに限られるわけではありません。証言なども不貞行為を証明し得る証拠になり得るのです。もっとも、どのような人物の証言でもいいわけではなく、また証言内容にもよります。
2 誰の証言が必要か
第三者の証言も裁判では証拠になりますが、その証言が信用に値するものでなければ有力な証拠にはなりません。例えば、妻が夫に不貞慰謝料を請求している事案で、妻の知人が裁判所で「〇〇(夫)から不貞していると聞いたことがある。」と証言したとしても、このような証言では有力な証拠とはならないでしょう。
不貞行為の裁判で有力な証拠となり得る証言は、不貞行為の一方当事者の証言です。例えば、妻が夫に不貞慰謝料を請求している事案でいえば、夫の不倫相手の女性が不貞行為を認める証言は有力な証拠となり得る場合があります。
3 証言内容
不貞行為の一方当事者が不貞行為をしたことを認めたからといって必ず裁判で不貞行為が認定されるわけではありません。もう一方当事者が不貞行為を否認しているのであれば、どちらかが嘘を付いていることになるわけで、裁判所としては、慎重に証言を検討しなければなりません。
証言で最も重要なことは、その証言の具体性です。例えば、「〇〇と不貞行為をしました。」「〇〇と不倫の関係にありました。」といったこのような抽象的で具体性に欠ける証言では、裁判においては不貞行為の認定はされないでしょう。証人に嘘を付く動機があるのか、証言全体の合理性云々なども証言の信用性には関わるところではありますが、具体的な証言があることが大前提です。
4 具体的な証言とは
具体的な証言といえるためには、例えば、〇年〇月〇日、〇時頃、〇〇の〇〇ホテルに行き性交をしました、といったようにできるだけ日時や場所を特定する必要があります。
裁判例(H28.3.11東京地裁判決)は「被告とは,平成22年9月頃,a老人ホームで知り合い,家のことや仕事の相談をするため電話番号を交換した。被告とは,電話以外でも昼休みの休憩時間にフロアの休憩室で話をした。同年11月頃,被告が外部研修の帰りに御徒町で会おうと誘ってきたので,カラオケボックスで会った。同月頃,午後8時位に綾瀬のホテルで被告と最初に関係を持ち,その後も月1回程度のペースで,綾瀬や日暮里のホテルに行った。会う時間帯は接骨院を開くまでは就業時間後,接骨院を開いてからは昼休みが多かった。被告との関係は,平成23年7月頃,被告の妻に不倫がばれて,被告の接骨院に来るなと言われた。当初,不倫を否定したが,その後,被告の接骨院の同僚から,被告も不倫を認めた旨の連絡があり,多分被告の妻の方から(原告に)連絡があると思ったので,先に原告に不倫を打ち明けた。」との不貞行為の一方当事者の証言について、「Aの証言は,被告と不貞関係を持った日時や場所等につき具体性が乏しく,被告において反証するのは困難である。」と判断しています。
裁判例のケースでは、一定程度の具体性はあるようにも思いますが、これでもまだ具体性に乏しいと判断されています。
5 どう生かすか
実際に裁判での証言といった場面では弁護士に依頼して弁護士主導のもとで対応されることがほとんどであると思います。ただ、ここで述べた証言の具体性に関する知識は何も裁判での証言のときだけに関わる話ではありません。例えば、不貞行為を突き止め、不貞行為の当事者と話し合いをすることはよくあると思います。またその際に、何か念書のようなものを書かせるといった話もよく聞きます。このときに、多くの人は「私は不貞行為をしました。」と書いてもらえばそれで満足しこれで大丈夫だと思うでしょう。しかしながら、後になってやっぱり不貞行為をしていないと否認に転じられた場合、抽象的な内容の念書では効果は薄いでしょう。具体的な日時場所などをできるだけ特定させることで、後になって否認に転じられたとしても、有利に交渉や裁判を進めることができます。
6 最後に
不貞慰謝料の請求は、状況に応じた証拠の収集の仕方を正しく理解して進める必要があります。何 か不安なことがあれば川西能勢法律事務所までご相談ください。
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