もう妻とは婚姻関係は破綻しているからと言われ肉体関係を持ちましたがこのような場合でも不貞行為の責任を負わなければならないのでしょうか。

不倫慰謝料Q&A

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1 婚姻関係が破綻していると信じていた場合はどうなるの?

 既婚者であることを知りながら,肉体関係を持った場合,その既婚者の配偶者に対して不貞行為の責任を負わなければなりません。もっとも,既婚者であることを知りながら肉体関係を持った場合でも,その既婚者と配偶者との婚姻関係が破綻した以降に肉体関係を持った場合であれば,不貞行為の責任は負いません。

 そして,故意,過失がなければ不貞行為の責任を負うことはありませんので,既婚者であると知りつつ肉体関係を持ったとしても,その既婚者と配偶者の婚姻関係が破綻していると過失なく信じていた場合には,不貞行為の責任を負わないことになります。

2 婚姻関係が破綻していると信じていたという主張が通用するの?

 裁判では,婚姻関係が破綻していると過失なく信じていたので不貞行為の責任を負わないといった主張はよくされますが,そのような主張が認められることは稀です。

 関係を持つことになる既婚者の話を単に聞いたというだけでは,婚姻関係が破綻していると過失なく信じたと認められることは難しいです。関係を持つことになる既婚者の言葉を信じることがやむを得ないといえるような事情や真実を積極的に確認したなどの事実あれば,婚姻関係が破綻していると過失なく信じたと判断してもらえる可能性があります。

3 婚姻関係が破綻していると過失なく信じていたという主張が認められたケース

事案の概要

 被告である女性が,既婚者である男性と肉体関係を持ち,その男性の妻で,原告である女性から慰謝料請求をされた事件です。既婚者である男性は,被告である女性に対して,独身であると嘘をついていました。被告の女性は,男性の言葉を信じて,男性と同棲することになりましたが,同棲から2か月ほど経過した頃,原告の女性が被告の女性に対して通知書を送ったことにより,男性が既婚者であることを知りました。男性は,被告である女性に対して,妻とは離婚をするつもりであると話し,妻に対してはメールで離婚の意思を伝えました。被告である女性は,男性が既婚者であると知ってからも男性の言葉を信じ,男性との同棲を継続しました。

裁判所の認定

①遅くとも同棲して以降は不貞行為を推認することができる。

②通知書を受領した時点では,既婚者であることにつき故意,過失はない。

③メールで離婚の意思を伝えた時点で婚姻関係は破綻した。

④通知書を受領してからメールで離婚の意思を伝えるまで期間について,婚姻関係が破綻したと信じたことについて過失はない。

裁判所の判断

 裁判所は,被告の女性の主張を認めて,原告の女性の請求を棄却しました。

事案の評価

 一般的には,別居してから2か月程度では婚姻関係は破綻とならない可能性が高いです。また,婚姻関係が破綻したと信じたことについて過失がないと判断されることも滅多にありません。この事案は,既婚者と知らないまま同棲してしまったという事情などもある特殊ケースの判断といえるでしょう。

 原告の女性から夫である男性に対する慰謝料請求は認められるでしょうから,原告の女性は夫である男性に対して慰謝料請求をして精神的損害を補填すべきです。

4 最後に

 婚姻関係が破綻していると過失なく信じていたという主張が認められるかどうかは個々のケースによって異なりますので,お悩みの方は,不倫や離婚の経験が豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

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