有責配偶者からの離婚請求なので10年程度別居期間がなければ離婚は認められないと聞いたのですが本当でしょうか。

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1 有責配偶者からの離婚請求

 有責配偶者からの離婚請求が認められるためには,離婚事由があるだけでは足りず,離婚請求が信義則に反しないと認められなければなりません。有責配偶者からの離婚請求についてはこちらの記事「有責配偶者から離婚をすることは難しいのでしょうか」もご覧ください。

 有責配偶者からの離婚請求が認められるためには,別居が長期間に及んでいることが必要であり,別居期間が10年以上であっても離婚が認められないこともあります。

 しかしながら,どの程度の別居期間があれば有責配偶者からの離婚請求が認められるのかはケースバイケースであり,場合によっては短期間で離婚請求が認められることもあります。

2 有責配偶者からの離婚請求が認められる基準

 有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかは,①別居期間が長期に及んでいるといえるか,②未成年の子がいるか,③離婚後に精神的,社会的,経済的に過酷な状態に置かれないかといった事情などから判断されることになります。しかしながら,必ずしも上記の①ないし③の事情のみから判断されるわけではありません。

3 お互いの有責性の度合い

 有責配偶者とは,婚姻関係の破綻について専ら又は主として責任のある当事者をいい,代表的な有責配偶者は,不貞行為をした当事者です。もっとも,離婚請求をする有責配偶者の有責性の度合いは,不貞行為をしていない当事者の有責性の度合いの低さとの関係で相対的なものとなります。つまり,有責配偶者からの離婚請求であっても,もう一方当事者の有責性が大きければ,離婚が認められやすくなります。

4 裁判例から考察

有責性の程度

 不貞行為をした有責配偶者である夫から妻に対する離婚請求の事案について,裁判所は,①妻が夫に何の予告もなく自宅の鍵を取り替え,夫が自宅に戻ることを不可能にしたこと,②妻が夫名義で安易で多額な借金を繰り返したこと,③夫に対して風俗店を勧めるなど配慮を欠いた言動があったことなどの事情から,妻に対しても一定程度の有責性があったことを認めています。

離婚請求が信義則に反するか

 その上で,上記裁判所は,①妻が夫に何の予告もなく自宅の鍵を取り替え,夫が自宅に戻ることを不可能にしたこと,②子らは未成年とはいえ比較的年長者であったこと,③夫は妻が作った借金の返済を続けていたこと,④夫が妻に対して過分な婚姻費用を1年以上にわたり支払っていること,⑤妻が今後支出を圧縮することが十分可能であること。⑥子らの年齢から稼働制限をしなければならない状況にはないことなどから,別居期間が1年6か月と短期間にもかかわらず,離婚請求を認めました。

5 まとめ

 有責配偶者からの離婚請求の事案であっても,必ずしも長期の別居期間がなければ離婚が認められないというわけではありません。自ら婚姻関係を破綻させるようなことをしていれば,短い別居期間で離婚が認められてしまう場合もあります。相手に不満があったとしても,感情的な言動は抑えていたほうが後々離婚の手続きを有利に進めることができます。また,有責配偶者であるため,離婚をしたいけれど,長期の別居期間が必要と聞いたため,離婚請求に躊躇していた方については,必ずしも別居期間が短期間であるからといって離婚を諦める必要はありません。

 有責配偶者からの離婚請求の事案は,状況により結論が大きく変わる場合があり,形式的に判断していては,判断を誤り思いもよらない損失を被ることもあります。

 有責配偶者からの離婚請求の事案で,有利に離婚手続きを進めたい場合は,離婚や不倫の事案の経験が豊富な弁護士に相談されることをお勧めします。

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