有責配偶者からは離婚することは難しいのでしょうか。

不倫慰謝料Q&A

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1 有責配偶者とは

 有責配偶者とは,婚姻関係の破綻について専ら又は主として責任のある当事者をいいます。代表的な有責配偶者は不貞行為をした当事者です。

 訴訟手続では,離婚事由があれば離婚が認められることになります。しかしながら,有責配偶者からの離婚請求の判断においては,離婚事由があるだけでは足りず,有責配偶者からの請求が信義則に反しないと判断されてようやく離婚が認められることになります。

2 信義則に反しないと判断されるための基準は?

 有責配偶者からの離婚請求が信義則に反するかどうかは,①別居期間が長期に及んでいるといえるか,②未成年の子がいるか,③離婚後に精神的,社会的,経済的に過酷な状態に置かれないかといった事情などから判断されることになります。

 未成年の子がいるケースでも有責配偶者からの離婚請求を認めた裁判例もあります。

3 別居期間はどの程度必要なの?

 どの程度の別居期間が必要であるかは個々の事案により様々ではありますが,有責配偶者からの離婚請求が認められるためには,10年は別居期間が必要であるなどと説明されていたりもします。ただ,最近の裁判例の傾向として,10年未満の別居期間で離婚が認められるケースが増えているように思います。

・別居期間2年8か月で離婚が認められたケース

 同居期間が1年9か月,有責配偶者である夫が34歳,妻が33歳,子はいない,婚姻費用として月額10万円を支払っていること,解決金として320万円を支払うことを申し出ているというケースにおいて,裁判所は,有責配偶者からの離婚請求を認めました。

 別居期間2年8か月は,一般的には短いと考えられますが,他の事情により離婚請求を相当と認める理由があれば,必ずしも別居期間が長期に及んでいる必要はないようです。

・別居期間9年で離婚が認められなかったケース

 同居期間が10年,有責配偶者の夫は不倫相手の女性と交際を継続しており離婚後は不倫相手の女性と結婚することを宣言している,高校1年生と中学2年生の子どもがいる,妻は夫の実家で生活をしているといったケースにおいて,裁判所は,そもそも婚姻関係は破綻していないと判断しました。つまり,有責配偶者の離婚請求が信義則に反するかどうかを判断する以前に,離婚請求は認められないという判断になります。

 また,裁判所は,夫が一方的,執拗に離婚を迫るなど有責の程度が大きいことから,時の経過による影響はさほどないとも述べています。

 この裁判例からも分かるとおり,単に長期間にわたり別居をすれば離婚が認められるというわけではなく,有責の度合いなどからも総合的に判断されることになります。

4 過酷な状態に置かれないとは?

 離婚をする条件としてどの程度の経済的な援助をしたか,またはするつもりであるかといった事情を考慮し,離婚後に過酷な状態に置かれないかを判断することになります。

 有責配偶者であれば不貞行為の慰謝料は発生することになるので,相場どおりの慰謝料の支払いを申し出たとしても,有責配偶者にとって有利な事情とみなされるわけではありません。慰謝料とは別に,離婚後に生活補償として継続的に一定の金銭の援助をする,相場の慰謝料以上の金銭を解決金として支払う,財産分与で大きく譲歩することなどを申し出ているといった事情があれば,離婚後に過酷な状態に置かれないと判断される可能性が高くなります。

5 未成年の子がいない

 未成年の子がいる場合であっても,他の事情も含めて総合的に考慮した上で,離婚請求が認められる場合があります。未成年の子が成年に近い年齢である場合には,未成年の子がいたとしても,離婚請求が認められやすくなります。反対に,未成年の子がまだ幼い場合には,離婚請求が認められにくくなるでしょう。

6 有責配偶者の離婚の進め方

 有責配偶者の離婚請求は簡単に認めてもらうことは難しいですが,有責配偶者であっても,お互いに離婚をすることに同意していれば離婚をすることができます。

 離婚の意思が固いのならば,別居期間が短い場合であっても,調停手続などの利用も視野に入れて話し合いを試みるべきであります。

 有責配偶者である相手方との離婚を検討されている方については,こちらの記事「夫に不倫されました。相場どおりの慰謝料を払ってもらえば離婚しても損はしないでしょうか?」もご覧ください。

7 最後に

 有責配偶者の離婚請求は,話し合いの段階から難航することが予想されます。有責配偶者からの離婚の手続きを円滑に進めるにあたっては,離婚や不貞の経験が豊富な弁護士に依頼をするお勧めします。

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コメント

  1. […] 川西能勢法律事務所公式HPインスタグラムでは裁判例をイラスト付きで解説しています。 1 既婚者であることを知らなかった  既婚者と性行為をしてしまうと,不貞行為となり,不倫相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性が… 離婚に同意してくれない場合は別居をする必要があるの?離婚するために必要な別居期間について解説します。 有責配偶者からは離婚することは難しいのでしょうか。 […]

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