不貞慰謝料は相手方の収入や社会的地位によって金額は変わるのでしょうか。

不倫事例解説

川西能勢法律事務所HP

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1 当事者の収入や社会的地位

 不貞慰謝料の相談を受けていると,「不貞相手や不貞をした配偶者は社会的地位も高く,収入も多いので,慰謝料もたくさん取りたいです。」「無職なのですが,それでも不貞慰謝料は払わないといけないのですが,金額は少なくなりませんか。」といった質問を受けることがあります。

 請求相手となる当事者がお金持ちであれば相場程度ではなくもっと貰わないと納得できないと思う気持ちも分かります。しかしながら,近年の裁判例においては,当事者の社会的地位や収入は慰謝料の算定にあたって考慮されない傾向にあるように思います。

2 裁判例から考察

 昭和40年代までの裁判例においては,当事者の社会的地位や収入を慰謝料算定の事情として考慮することが多くありました。

 もっとも,近年は,それらの事情は慰謝料算定の事情として考慮されない傾向にあるようです。例えば,東京地方裁判所平成23年12月28日の裁判例は「なお,原告は,慰謝料額の算定において被告の現在の役職(社会的地位の高さ)や財力を考慮すべきであると主張するが,これらの被告の属性に関する一般的事情は,上記不法行為により原告に生じた精神的損害とは無関係であるから,慰謝料額の算定において考慮することはできない。」と述べ,当事者の地位や収入などの事情は慰謝料額の算定においては考慮されないと判断しました。

 一方で,平成20年以降においても,当事者の資力や職業を慰謝料算定の考慮要素として判断した裁判例もあります。

3 当事者の職業が考慮された事例

・患者と精神科医の不貞

 患者と精神科医が不貞関係にあった事例において,裁判所は「心を病む配偶者の治療に託した精神科医に,常識外の裏切られ方をした患者の親族による慰謝料請求事件なのである。」と述べるなど,患者と精神科医が不貞関係に至った事情を考慮し,不貞慰謝料として400万円の支払いを認めました。

 不貞慰謝料の相場は100万円から200万円程度であることからすると,慰謝料400万円はかなり高額であり,患者と精神科医という事情は結論に大きく影響を及ぼしたと思われます。

・弁護士と依頼者

 被告である弁護士は,原告である男性から企業関連の依頼などを受任し,訴訟対応などをする立場にあったところ,原告の妻と不貞関係に陥ったという事案において,裁判所は,「信頼を裏切る行為と言わざるを得ない」として,被告である弁護士に慰謝料300万円の支払いを命じました。

 慰謝料300万円も相場より高額であるので,弁護士と依頼者の関係を裏切ったという事情が慰謝料額の算定に大きく影響したと思われます。

4 まとめ

 当事者の収入や職業,社会的地位などは,それ自体では慰謝料額の算定に考慮されないか,あるいは考慮されたとしても額に大きく影響を及ぼすものではないことが多いです。 一方で,当事者が有する地位や立場と絡めて不貞関係に至った場合には,そのような事情は,慰謝料額の算定に考慮されることが多く,また額に及ぼす影響も大きいことが多いです。

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