婚姻関係破綻していると聞いており,その言葉を過失なく信じていましたは通用しない!?(平成31年3月19日判決東京地方裁判所)

不倫事例解説

川西能勢法律事務所HP

インスタグラムでは事例をイラストで解説しています。

(登場人物)

原告=不倫された女性

被告=原告の夫であるAと不倫をした女性

A =原告の夫であり,被告と不倫をした男性

(事案の概要)

Aは被告に対して,婚姻生活はうまくいっておらず,原告との肉体関係はないこと,食事も一緒に食べていないこと,一緒に出掛けることはないこと,夫婦関係はもう終わっていることを話し,Aと被告は交際することになった。

 その後,被告がAに対して,離婚するのか尋ねたことがあったが,Aはそれに対して,喪に服しているからそういうことは言えないと答えたことがあった。

 その数年後,被告が原告に対して,被告とAが不倫していることを内容とする手紙を渡したことにより,原告は被告とAが不貞の関係にあることを知った。

 Aは原告に対して,被告とは別れて今後会わないと約束した。しかしながら,原告は,その後,Aと被告が会っているところを目撃し,二人を車で追跡した。原告は,Aと被告が会っているところを写真に収めたが,Aはその写真を撮ったカメラを持ち去った。

(事案の背景)

被告は自ら原告に対して,Aと不倫をしていることを書いた手紙を渡し,それによって原告はAと被告が不倫の関係にあることを知りました。

なぜ被告がそのような行為に出たのかについて,判決では詳細には触れていませんでしたが,被告は,Aが原告と離婚すると言いながらも離婚しないことに苛立ちを感じていたのかもしれません。同時に,被告は,Aから原告との婚姻関係は既に破綻していると聞いていたため,Aと男女の関係になることについて法的責任を問われることはないと思っていたのかもしれません。

(過失なく既に婚姻関係は破綻しているとの言葉を信じたという主張が認められるのか)

・前提

 被告は,Aと肉体関係を持ったことは認めつつも,Aからは原告との婚姻関係は既に破綻していると聞いており,そのAの言葉を過失なく信じたため,不法行為責任を負わないと主張しました。

 仮に被告の主張が認められると,故意過失によって原告に損害を与えたとはいえないため,被告は不法行為責任を負わないことになります。

 しかしながら,不貞慰謝料の事案において,「婚姻関係は破綻していると聞いており,それを過失なく信じていた」という主張はよくありますが,そのような主張はまず認められないと思っていたほうがいいでしょう。裁判所はこの点について以下のとおり判断しています。

・裁判所の判断

 「被告は,不貞行為を申し込んだAが話した内容自体を信用し,それが客観的事実と異なるのに,その裏付けはなんら取っていないことを考慮すると,被告には,原告とAとの婚姻関係が破綻していると信じたことに過失があると認めることができる。」

・対応についてのアドバイス

 「婚姻関係は破綻していると聞いており,その言葉を過失なく信じていた。」との主張が裁判所に認められることは難しいでしょう。既婚者からそのようなことを言われ関係を迫られたとしても,軽率にその言葉を信じて,関係を持ってしまうのはよくありません。

一方で,不倫相手に慰謝料を請求し,不倫相手が上記の主張をしてきた場合は,そのような主張は受け入れられないと反論して諦めることなく慰謝料を請求しましょう。

(追跡し写真を撮ったことにより慰謝料が減額されるか)

 被告は原告がAの運転する車を追跡した行為をストーカー行為であり,慰謝料額を減額すべきだと主張しました。それに対して裁判所は,追跡行為は,被告とAが不貞の関係にあることが発端となって行われたものであること,原告がAと被告が一緒にいることを偶然目撃した際の行動であることなどを理由に,慰謝料額を減額する事情とまでは認められないと判断しています。

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