養育費増額の申立て。子どもが15歳になったら増額してもらえるのでしょうか。

離婚Q&A

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1 養育費の生活指数

 大半の方が,いわゆる養育費算定表をもとにして養育費の額を決めていることかと思います。

 養育費算定表は,お互いの収入,子も含めた生活指数をもとに作成されています。そして,生活指数は,大人が100,15歳未満は62,15歳以上については82と決められています。

 つまり,子どもが15歳以上になれば生活指数が大きくなるため,生活指数だけをみると養育費が増額することになるのです。ただ,収入にも少なからず変化はあるでしょうから,最終的に養育費が増額するかどうかは,お互いの収入の増減などにもよることになります。

2 養育費の増額ができる場合

 計算上は養育費の増額が可能であっても,裁判所は無制限に養育費の増額を認めてくれるわけではありません。養育費の増額が認められるためには「事情の変更」にあたることが必要になります。

 事情の変更にあたるかどうかは事案によりケースバイケースであります。場合によっては当初合意をしていた当時に想定されていた程度の変更として,事情の変更にはあたらず養育費の増額は認めないと判断されることもあります。

 収入が大きく増加した,減少した,あるいは高額な医療費が必要になったといった場合には,それらが事情の変更にあたるのか否かが争点になります。これらについて事情の変更にあたるかどうかは,金額や事情によりケースバイケースでしょう。

 それでは,子どもが15歳になったということは,事情の変更に該当するのでしょうか。子どもが15歳になることは想定されていることではあるので事情の変更にはあたらないのではないかとも考えられます。

3 子どもが15歳になったら増額できるの?

裁判所の現状

 子どもが15歳になったことが事情の変更にあたり,養育費の増額が認められるのか否かについては,明確な結論が出ているわけではありません。裁判所によっても判断にはバラツキがあるように思います。

令和3年3月5日東京高裁の決定

 比較的新しい上記東京高裁の決定は,子どもが15歳に達した場合に事情の変更にあたるかどうかについて,「標準算定方式を採用する場合,子が15歳に達すると生活費指数が増えるのであるから,当事者双方において子が15歳に達した後も養育費を増額させないことを前提として養育費の金額について合意した等の特段の事情が認められない限り,子が15歳に達したことは原則として養育費を増額すべき事情の変更に該当するものと解され,本件においてそのような特段の事情を認めるに足りる資料がないから,長男が15歳に達したことをもって平成28年調停で合意された養育費を増額すべき事情の変更に当たると認めるのが相当である。」

 つまり,上記東京高裁は,子どもが15歳に達した場合には,原則として事情に変更にあたり,養育費の増額が認められると判断したのです。15歳に達した後も増額しないことを前提とした合意をすることなど一般的には考えられませんから,上記東京高裁の判断に従えば基本的には子どもが15歳に達した場合には事情の変更にあたることになるでしょう。

 ちなみに原審は,子どもが15歳に達したことは想定内の変更であり事情の変更とは認められないとして養育費の増額を認めませんでした。

東京高裁の裁判例が持つ意味

 東京高裁の裁判例が上記の判断をしているからといって,必ずしも各家庭歳場所がその判断に従わなければならないというわけではありません。しかしながら,実際は上記東京高裁の判断に真っ向から対立するような判断を各家庭裁判所の裁判官が出すことは難しいように思います。上記東京高裁の判断は実務上にも影響を及ぼす判断といえるでしょう。

4 子どもが15歳に達した後の対応

 子どもが15歳に達し増額を求める場合は,まず相手方本人に増額することが可能かどうか意向を確認したほうがいいでしょう。それで相手方が応じれば問題はありません。一方で,相手方が応じなかった場合については,時間をかけて説得や交渉をするより,速やかに養育費の増額を求める調停の申立てをしましょう。提出書類などは,裁判所のHPに書式があり,手続きは難しくありません。申立書類一式に上記高等裁判所の裁判例を添付して申立てをすればよいでしょう。

5 面会交流について

 離婚するときには養育費の取り決めの他に面会交流についても取り決めをすることが多いと思います。面会交流に抵抗があるかたもおられるかと思いますが,暴力や虐待などの事情がなければ裁判所は面会交流を勧めてきます。

 離婚時に面会交流の取り決めをしており,定期的に実施しているというのであれば,相手方に対する連絡もスムーズにいくでしょうから,養育費の増額を求めやすいでしょう。反対に面会交流を全く実施していないというのであれば,おそらく全く連絡を取っていないケースが多いでしょうから,連絡を取ることができない,居場所が分からず調停の申立てをすることができないといった事態になることも想定されます。

 面会交流を定期的に実施することで,養育費の増額請求もスムーズに進めることができるという側面もあります。

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