1 離婚に伴う慰謝料
離婚するにあたって,親権者,財産分与,養育費などの他に,慰謝料についても何らかの取り決めをすることはよくあります。離婚の際に問題になる慰謝料とは,婚姻関係を破綻させたことによる慰謝料のことです。婚姻関係を破綻させた原因がどちらともいえないというケースでは,慰謝料の支払義務は発生しません。
2 離婚に伴う慰謝料が発生する場合
離婚に伴い発生する慰謝料として代表的なものとして,不貞行為があります。一方の配偶者の不貞行為が原因で婚姻関係が破綻したということになれば,不貞行為をした配偶者が慰謝料の支払責任を負うことになります。
法的な離婚事由が認められない場合,いわゆる性格の不一致などで離婚するケースでは,両者ともに慰謝料の支払いまで認められないことが多いです。
不貞行為の他に,婚姻関係が破綻した原因が一方配偶者の暴力にあるケースでは,離婚に伴う慰謝料が認められる可能性が高いです。
3 暴力が原因で離婚したと認められる場合
暴行が原因で離婚したと主張したとしても,その主張が裁判で認められるためには,証拠を提出する必要があります。
暴力が認められるための主な証拠としては,傷の写真,診断書などがあります。その他,警察などに相談し,調書を作成してもらえば,それも重要な証拠となります。
暴行後を受けた後,すぐに行動をするようにしましょう。暴行後に期間が空いてしまうと,警察も取り合ってくれず,傷の写真や診断書を作成したとしても,証拠としての信憑性が薄くなってしまいます。
4 慰謝料請求のポイント
離婚に伴う慰謝料の請求は,婚姻関係を破綻させたことを理由にするものなので,暴行が原因で婚姻関係が破綻したか否かが重要なポイントになります。
暴行はあったものの,暴行と婚姻関係が破綻したことに因果関係がなければ,慰謝料請求が認められる可能性は低くなるでしょう。
また,お互いに暴力を振るっている場合には,どちらか一方の暴力により婚姻関係が破綻したとは認められないため,慰謝料請求が認められる可能性は低くなるでしょう。
5 暴力を理由とする離婚に伴う慰謝料が認められたケース
妻が夫に対して,暴力を理由とする離婚に伴う慰謝料の支払いを求めていた事案で,裁判所は,複数回,断続的(2年程度の期間)に暴力があったことを認め,慰謝料180万円の支払いを認めました。一番大きな怪我は,顔に痣ができるほどでした。
裁判所は,離婚の原因は専ら暴力にあるとしたものの,妻にも婚姻関係が破綻したことに対して一定の責任があることを認定しています。
本事案では,傷の写真や妻が書いた日記が証拠として提出されており,また,暴力相談センターや警察署に相談に行った事実が認定されています。このように,裁判で暴力があったことを認めてもらうためには,証拠の提出や暴力があったことを前提とする事実などが必要になります。
6 まとめ
暴力を理由に慰謝料の支払いを求めるには,高度な法的知識や交渉技術が必要になります。お困りの際はこちらまでご相談ください。
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