夫または妻と離婚するときに夫または妻から不貞慰謝料を受け取ると,不貞相手からは慰謝料を受け取れない,あるいは減額されるのでしょうか。

不倫事例解説

川西能勢法律事務所HP

インスタグラムではイラスト付きで事例を解説しています。

1 不貞慰謝料は不真正連帯債務

 不貞慰謝料は,他方配偶者と不貞相手との不真正連帯債務になります。仮に不貞慰謝料の金額が300万円であった場合,他方配偶者には請求せずに,不貞相手に対して300万円全額の請求をすることも,他方配偶者,不貞相手にそれぞれ150万円ずつ請求することもできます。一方で,両者から慰謝料の二重取りはできないため,仮に他方配偶者から不貞慰謝料として300万円の支払いを受けていれば,不貞相手に対する不貞慰謝料の請求は認められなくなります。

2 二重取りはできない

 例えば,不貞慰謝料が300万円である場合,既に他方配偶者から不貞慰謝料として300万円を受け取っていれば,不貞相手に対する請求は認められないことになります。他方配偶者から不貞慰謝料として200万円を受け取っていれば,不貞相手に対する請求は100万円が認められることになります。

3 二人から慰謝料の支払いを受けたい。

 二重取りができないといってもそれはあくまで不貞慰謝料として金銭の支払いを受けた場合です。不貞相手から受け取る金銭は不貞慰謝料以外にありませんが,他方配偶者と離婚する際に受け取る金銭は,不貞慰謝料以外にモラハラ,パワハラ,暴行などに対する慰謝料,財産分与など,不貞慰謝料だけに限りません。

 そして,協議離婚書や合意書などでは解決金という名目で記載されることも多くあります。解決金という言葉だけでは,それが不貞慰謝料を指しているのか,それとも財産分与や不貞行為以外の慰謝料を指しているのか分かりません。

 そのため,例えば他方配偶者と離婚する際に,離婚協議書などに記載される名目を解決金としておけば,他方配偶者との離婚において一定の金銭を受け取ったとしても,その受け取った金銭は不貞慰謝料として受け取ったのではないという主張をすることができます。そのような主張が認められると,不貞相手からも不貞慰謝料として十分な金銭を受け取れることができるでしょう。

4 裁判例から考察

・解決金として受けた金銭が不貞慰謝料と認定されなかったケース

 不貞をされた妻である原告が不貞相手の女性である被告に不貞慰謝料を請求した事案において,被告は,原告が夫と離婚する際に解決金として200万円を受け取っていることを主張しました。

 この点について裁判所は,「この解決金が,被告の本件不貞行為による損害賠償義務を免れさせたり,軽減させたりする性質を有することを認めるに足りる証拠はない。」として,被告の主張を認めず,原告から被告に対する請求について慰謝料140万円を認めました。仮に被告の上記主張が認められていれば,原告の請求は棄却されていたでしょう。

・解決金として受けた金銭が不貞慰謝料として受け取ったと認定されたケース

 不貞をされた妻である原告が不貞相手の女性である被告に不貞慰謝料を請求した事案において,被告は,原告が夫と離婚する際に解決金として50万円を受け取っていることを主張しました。

 この点について裁判所は,「不貞関係によって離婚に至ったことについての慰謝料という趣旨で50万円の支払を受けることで合意し,「原告に対し,離婚に伴う解決金として50万円の支払義務があることを認める。」旨の調停を成立させたというのであるから,上記50万円の解決金は,被告とAの不貞行為による原告の精神的苦痛を慰謝する趣旨のものであったというべきである。」として,認定した不貞慰謝料150万円から50万円を控除し,100万円に限り支払いを認めました。

5 まとめ

 上記の裁判例からも分かるとおり,解決金として金銭を受け取った場合に,そのことが不貞慰謝料の訴訟で考慮される事情になるかどうかはケースバイケースであります。また,合意に至った経緯にもよっても結論が変わります。

 できるだけ両者から多く慰謝料を取りたいのであれば,他方配偶者と離婚するにあたって金銭を受け取る場合には,名目は不貞慰謝料ではなく解決金としたほうがよいでしょう。

 一方で,不貞をした側からすれば,不貞慰謝料として金銭を払うつもりである場合には,解決金といった不明確な名目ではなく,不貞慰謝料と明確に記載したほうがよいでしょう。

 法的知識が必要であり,内容も複雑ではあるので,両者からできるだけ多く慰謝料を取りたい方は弁護士に相談されたほうがよいでしょう。

 ご相談お問合せはこちらから。

Follow me!

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました