接触禁止条項に反した場合は違約金1000万円。これ有効?(平成25年12月4日判決東京地方裁判所)

不倫事例解説

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1 事案の概要

 原告(男性)が,原告の妻と不貞行為をした被告(男性)を訴えた事件です。

 被告と原告の妻は,職場の上司と部下の関係にありました。原告が依頼した探偵の調査により,被告と原告の妻が不貞関係にあることが明らかになりました。原告は,被告をファミリーレストランに呼び出し,被告に対して,原告の妻との連絡や接触を禁止すること(以下「連絡接触禁止条項」といいます。),連絡接触禁止条項に違反した場合には違約金1000万円を支払うことを内容とする誓約書に署名をすることを求め,被告は誓約書に署名をしました。

 しかしながら,原告の妻が被告に対してメールを送信したことをきっかけに,被告と原告の妻の不貞関係は継続されました。

 その後,原告が依頼した探偵により,被告と原告の妻が再度不貞関係にあることが明らかになりました。

 そして,原告は被告に対して,不貞慰謝料及び連絡接触禁止条項に違反したことを理由に損害賠償の支払いを求めました。

2 違約金について

・裁判所が示した違約金を制限する基準

 違約金を定めたからといって,必ずしも定められた違約金どおりの損害賠償が認められるとは限りません。違約金の額があまりに高額であれば,合理的な額に制限される場合があります。

 この点について,裁判所は,「その額については,面会・連絡等禁止条項が保護する原告の利益の損害賠償の性格を有する限りで合理性を有し,著しく合理性を欠く部分は公序良俗に反するというべきである。」と判断基準を示しています。

今回の事例においての結論

 裁判所は,違約金1000万円について,不貞関係にまで至った場合に認められる損害額と比較しても,損害賠償額として著しく過大であるというほかないと判断しています。その上で,裁判所は,連絡面会禁止条項に反した場合の損害賠償額は,その態様が悪質であってもせいぜい50万円ないし100万円程度であると考えられるから,履行確保の目的が大きいことを最大限考慮しても,少なくとも150万円を超える部分は,違約金の額として著しく合理性を欠くというべきであると判断しました。

3 不貞慰謝料について

・本件不貞行為の慰謝料

 裁判所は,被告が誓約書に署名するまでの不貞行為を本件不貞行為,被告が誓約書に署名して以降の不貞行為を再度の不貞行為とし,本件不貞行為の慰謝料を150万円としました。

・再度の不貞行為の慰謝料

 裁判所は,再度の不貞行為の慰謝料を200万円としました。もっとも,裁判所は,再度の不貞行為は連絡接触禁止条項違反でもあるとし,違約金による補填を考慮し,被告は50万円を支払うべきであるとしています。(不貞行為の慰謝料200万円から連絡接触禁止条項違反の損害賠償150万円を控除した50万円についてのみ支払いが認められました。)

4 まとめ

 接触禁止条項に反した場合の違約金を定めたとしても,金額が過度に高額であれば合理的な金額に制限されてしまいます。しかしながら,違約金を定めていなければ損害賠償として150万円もの金額が認められない可能性が高いので,違約金を定める意味はあるでしょう。もっとも,今回の事例においては,再度の不貞の慰謝料に接触禁止条項違反の損害賠償も含まれるとの解釈であったため,違約金の定めは結果に影響しませんでした。

 当事者間でされた合意の内容は,必ずしも文面どおり有効となるとは限りません。有効無効の判断には法的知識が必要であります。お悩みの方は,離婚や不倫事件の経験が豊富な川西能勢法律事務所の弁護士にご相談ください。

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