1 問題の所在
夫(妻)に不倫をされた相談者や依頼者の方から,「不貞の事実を相手の親や友人,職場の人に知らせてやりたいが何か問題はないでしょうか。」といった質問をいただくことがよくあります。
不貞の事実を第三者に伝えるなどすると,プライバシーの侵害として,損害賠償責任を負うことがあります。不貞の事実を相手方の親や友人,職場の人に知らせたいというお気持ちは理解しますが,そのような行為は控えたほうがよいでしょう。
2 裁判例から考察
事案の概要
原告は,原告の夫であるAと被告が不貞関係にあったことから,Aの父親にははがきで,被告の父親には手紙で,友人にはDMで,被告とAが不貞関係にあったことなどを知らせました。
原告は被告に対して,不貞行為を理由とする損害賠償請求をしましたが,被告は原告に対して,プライバシーの侵害を理由に損害賠償請求を求める反訴を提起しました。
結果
原告から被告に対する不貞慰謝料請求は80万円が認められましたが,被告から原告に対するプライバシーの侵害を理由にする損害賠償請求は30万円が認められました。
原告には不貞慰謝料で80万円の損害賠償の支払いが認められたものの,被告に対して30万円の損害賠償をしなければならないので,それらを差し引きすると,結局は50万円しか手元に残らないことになりました。
3 交渉や訴訟で不利になる
不貞行為の事実を第三者に知らせてしまうなどの行為をすると,損害賠償責任を負う可能性があります。不貞慰謝料を請求する場合,まずは相手方と交渉をすることになります。第三者に不貞行為の事実を知らせたということがあれば,慰謝料を請求された側は,交渉において,その事実を慰謝料減額の理由として主張することが考えられます。また,訴訟においては,それらの事実を減額の理由として主張するに留まらず,反訴提起をすることも考えられます。
そうすると,交渉や訴訟のいずれにおいても,最終的に獲得できる慰謝料の金額は減額される可能性が高くなります。
また,相手方も感情的になり,交渉や和解の話し合いがスムーズに進まなくなり早期解決が難しくなるということも考えられます。
4 最後に
感情を抑えながら不貞相手に交渉をするのは難しいところもあります。不貞慰謝料請求については,経験や知識が豊富な弁護士からの適切な助言をもとに,正しく手続きを進めることが大切です。
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